2012年4月8日日曜日

日本動脈硬化学会-公式サイト-


「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」では、従来の「高脂血症」から 「脂質異常症」と名称を変更し、LDL-コレステロール値、トリグリセライド値、 HDL-コレステロール値で定義することとしました。これは、低HDL-コレステロ ール血症が含まれるのに「高脂血症」とすることに違和感があるからです。脂質 異常症という診断名は、低HDL-コレステロール血症も含めて、動脈硬化の危険因 子として認識する際に用いられる診断名です。したがって、その診断名には高脂 血症も低脂血症も含まれます。その意味で、高コレステロール血症や高トリグリ セライド血症をまとめて、「高脂血症」という診断名を用いることは問題ありませ ん。なお、脂質異常症という診断名には、レムナントやsmall dense LDLが認め られるリポ蛋白異常の場合にも用いることができ、その意味でも動脈硬化性疾患 の危険因子として「脂質異常症」を捉えることが重要であると考えられます。

動脈硬化巣の初期病変であるプラークの内部にはコレステロールが沈着してい ますが、このコレステロールはLDLに由来するものであることが判明しています。 またLDL-コレステロールを低下させることで動脈硬化性疾患が減少することも 確認されています。このように動脈硬化に密接に関係しているコレステロールは LDLに含まれるコレステロールなのです。したがって動脈硬化を予防するために は、総コレステロールよりもLDL-コレステロールに注目しなければいけません。 特に日本人では、総コレステロール値が高値であってもHDL-コレステロール値 も高値であるためにLDL-コレステロール値が正常である人が多く認められます。 本来治療は必要でないこのような人たちを鑑別するためにも、LDL-コレステロ ールに注目する必要があるわけです。

LDL-コレステロール値を求める方法として、Friedewaldの式で計算する方法 と直接測定法とがあります。Friedewaldの式は、空腹時の採血でトリグリセラ イド値が400mg/dL未満である場合に使用できます。現在までのエビデンスが 総コレステロール値を測定してFriedewaldの式でLDL-コレステロール値を求め た結果から導かれていること、またLDL-コレステロール値の直接測定法がまだ 十分に標準化されていないことなどより、LDL-コレステロール値を求めるとき には総コレステロール値を測定して計算式で求めるほうが望ましいと考えます。
 またガイドラインではnon HDL-コレステロールも治療目標値として用いるこ とを勧めていますが、それは総コレステロール値-HDL-コレステロール値で計 算されます。したがって、総コレステロール値を測定する必要がでてきます。

臨床検査分野におけるLDL-コレステロール測定の国際標準法(米国疾病管理 センター;CDC)はベータ定量法(beta-quantification;BQ)です。これは 血漿をそのまま超遠心して密度(比重)1.006g/mL以上の画分(VLDL)を除 き、残りの部分の総コレステロール値とHDL-コレステロール値(沈殿法)を測 定してその差から求めるものです。これがいわば臨床検査上のLDLの定義であり、 標準です。しかしこの方法は大量の血漿と時間費用人手がかかり、一般の臨床検 査で用いるのは現実的ではありません。
 一般に臨床検査で用いられるものはFriedewaldの計算式と呼ばれるものであ り、これは総コレステロール値(mg/dL)からHDL-コレステロール値(mg/ dL)を引き、さらにトリグリセライド値(中性脂肪)(mg/dL)を5で割った値 を引いた結果をLDL-コレステロール値としています。これは、VLDLに含まれ るコレステロールは平均トリグリセライドの5分の1(重量)であるという仮定 に基づいています。この仮定はトリグリセライドの値が比較的低い時はかなり正 確で、計算結果はLDL-コレステロール値をよく反映しますが、これが高くなる につれてVLDLやカイロミクロンのコレステロール含有量はトリグリセライドの 5分の1よりもかなり少なくなり、その結果、この計算式を適用するとLDL-コレ ステロール値は実際より低く算定されます。経験的には、この計算式が適用でき るのはトリグリセライドが300~400mg/dL未満とされていますが、これより 低くても注意を要します。
 これに対し、最近用いられるようになったのが、いわゆる「LDL直接測定法」 と言われるものです。この方法はわが国で開発されたもので、界面活性剤などを 用い、特定のリポ蛋白質を破壊したりして、LDLに含まれるコレステロール値を 測定するもので、試薬メーカーによって、いくつかの異なる方法があります。い ずれも大変洗練された技術で、わが国の臨床検査の技術開発の高い水準を示すも のといえます。しかし、この方法にも問題があります。それは、まだ開発されて 日が浅く、総コレステロールやトリグリセライド、HDL-コレステロールといっ た十分に成熟し均一化された測定法と比べて、そのベータ定量法(上述)を標準 とした精度管理がまだ十分とは言えない面があることです。また、時に、対象検 体によっては、思いがけない異常な値を示すことがあり、それが測定の方法によ り異なるという問題があります。しかし、いくつかの異なる方法による測定法が いずれも「LDL直接測定法」とされていますが、臨床の現場ではそれがどの方法 で(どの試薬メーカーの測定試薬で)測定されたのかの情報が無く、異常値に対 する判断の材料が提供されていないのです。これらの問題を解決するため、測定 精度を上げる努力が各試薬メーカーを横断的に行われており、近い将来測定値の 信頼性が十分になることが望まれます。また異常値の出現について、薬剤の副作 用調査に準じたデータベースの整備と情報開示が必要です。二つの方法の使い分 けには、こうした限界を認識した上で、臨床的判断が必要です。


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わが国のJ-LITの結果で、総コレステロール血症と総死亡の間にU字現象が認 められ、総コレステロール値が低いものほど総死亡率、そして癌死亡率が上昇す ることが注目されました。総コレステロール値と総死亡-癌死の間にU字現象が 見られることは、MRFIT、PROCAM、NIPPON DATA80など多くの疫学研 究でも明らかです。Framingham研究やMRFITの癌コホート研究では、癌死と なる患者は、その5年前及び7年前から総コレステロール値が10あるいは 20mg/dL低下していることが判明しており、コレステロール低値群で癌死が多 いのは、コレステロール値が低いことが原因ではなく、むしろ癌患者でコレステ ロール値が低下するためと考えられています。薬剤を用いた際、コレステロール 値低下が強い場合は、癌など消耗性疾患の存在を考慮して検査する必要がありま す。脳出血と低コレステロール血症については、低栄養で血管が脆弱になってい ることとの関連が考えられていました。事実、高コレステロール血症の患者にお いて薬剤でコレステロール値を下げた場合に脳出血が増加するとの明らかなエビ デンスはなく、通常の治療の範囲内では心配しなくて良いと思われます。

HDL-コレステロール値の低下は冠動脈疾患の独立した危険因子であり、HDL は動脈硬化防御作用を有するリポ蛋白と考えられます。血管に蓄積した過剰なコ レステロールはHDLやアポ蛋白A-Ⅰによって引き抜かれ、HDL中へ組み込まれ ますが、HDL中のコレステロールエステルはコレステロールエステル転送蛋白 (CETP)により、VLDL、IDL、LDLなどのリポ蛋白へ転送されます。高HDL-コレステロール血症はHDL代謝に関与する酵素や蛋白の異常等により起こる症 候群で、遺伝性のものとしてCETP欠損症、肝性リパーゼ欠損症、二次性高 HDL-コレステロール血症として原発性胆汁性肝硬変に合併する高HDL-コレス テロール血症などがあります。CETP欠損症はわが国の高HDL-コレステロール 血症には極めて関係が深いと考えられます。CETP欠損症ホモ接合体の総コレス テロール値は中等度の増加、LDL-コレステロール値は正常ないし軽度低下、 HDL-コレステロール値は130~250mg/dLと著増します。HDL-コレステロー ル増加はHDL2分画の増加に由来し、HDLはコレステロールエステルに富み大 粒子化しています。CETP欠損症による高HDL-コレステロール血症では動脈硬 化合併例も認められ、ハワイ在住の日系米人の調査で冠動脈疾患患者において CETP欠損症の頻度が高いとの報告もあります。一方、HDLの合成増加による 高HDL-コレステロール血症では動脈硬化の発症が少ないと考えられます。した がって、高HDL-コレステロール血症の患者を診た場合は成因を検索し、CETP 欠損症を疑う場合は狭心症の有無の聴取、負荷心電図、頸動脈超音波検査などを 施行することが望ましいと思われます。薬物療法に関して一定の見解はありませ んが、動脈硬化を合併する場合には他の危険因子の軽減に努めることが大切です。

低HDL-コレステロール血症の成因として、遺伝性のものとしてはタンジール 病、LCAT欠損症、魚眼病、アポ蛋白A-Ⅰ欠損症、アポ蛋白A-Ⅰ/C-Ⅲ欠損症、 アポ蛋白A-Ⅰ/C-Ⅲ/A-Ⅳ欠損症、家族性低HDL血症などがあります。しかし、 遺伝性低HDL-コレステロール血症はきわめて稀であり、続発性低HDL-コレス テロール血症の方がはるかに多く、肥満、食事、運動不足、喫煙など、生活習慣 に大きく依存します。LDL-コレステロール値やトリグリセライド値が正常で、 HDL-コレステロール値のみが低下している場合、単独低HDL-コレステロール 血症(Isolated hypoalphalipoproteinemia)と呼ばれています。その成因とし てアポ蛋白A-Ⅰの合成異常やABCA1の異常、LCAT活性低下等の遺伝性のもの や、上記の生活習慣に起因するものが考えられます。単独低HDL-コレステロー ル血症の患者をみた場合、その対処法として、まず狭心症、心筋梗塞などの動脈硬 化性疾患の有無の精査を行う必要があり、頸動脈超音波検査にて粥状動脈硬化の 有無を評価することが大切です。低HDL-コレステロール血症の治療として、肥満 を合併する場合は食事療法・運動療法による体重の是正を行い、喫煙者の場合は 禁煙を徹底させ、運動不足の場合にはウオーキングなどの有酸素運動を継続させ ます。これらの方法でも低HDL-コレステロール血症が改善しない場合は薬物治 療も考慮する必要があります。動脈硬化性血管合併症を有する単独低HDL-コレ ステロール血症患者に対して、ゲムフィブロジル、ニコチン酸あるいはその併用 療法を行った成績が発表されています。症例数は少ないのですが、HDL-コレス テロール値はゲムフィブロジル投与で15%増加し、ニコチン酸投与では35%増 加、併用療法では45%と著しく増加しています。したがって、フィブラート系 薬とニコチン酸誘導体の単独投与や併用療法はHDL-コレステロール値上昇効果 が強いことが示されました。また、他にスタチン、エゼチミブなどもHDL-コレ ステロール値上昇作用があるので、動脈硬化合併例ではこれらの投与も考慮して よいと思われます。


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低トリグリセライド血症の定義は定まっていません。トリグリセライド値は食 事の影響を最も受けやすい脂質であることからトリグリセライドの低値では栄養 障害あるいは吸収不良を考慮しなければなりません。また、脂質値が低下する多 くの例では続発性のことが多く原疾患の存在を考慮すべきです。特に甲状腺機能 亢進症、肝硬変症はコレステロール値とともに低トリグリセライド血症を認めま す。これらの疾患では無症状で経過していることもあり、注意が必要です。また、 血液疾患や炎症性疾患ではいわゆるサイトカイン・ストームの病態であり、重篤 な例では血清脂質値が低下しますが、トリグリセライド値の低値が一義的に問題 となることはありません。遺伝的な疾患としての低脂血症(無βリポ蛋白血症あ るいは低βリポ蛋白血症)はごく稀ですが、原疾患を認めない例ではこれらを考 慮する必要があります。以上のように、低トリグリセライド血症に対する対応は、 原疾患(栄養障害、吸収不良性疾患、甲状腺機能亢進症、肝硬変)を診断するた めの検査を行うことが重要です。低下したトリグリセライド値を増加させる必要 はなく、原疾患に対応すればよいと考えられます。

低コレステロール血症の基準は明確ではありませんが、一般的には総コレステ ロール値(TC)120mg/dL未満とすることが多いようです。低コレステロール 血症自体の病的意義については未解明のことが多いのですが、重要なのはその原 因となる病態です。先天的な低コレステロール血症としては無βリポ蛋白血症、 異常アポ蛋白血症などの遺伝子異常症があげられます。後天的低コレステロール 血症をきたすものとしては低栄養、吸収不良症候群、甲状腺機能亢進症、肝疾患 などが知られていますが、重要な原因疾患として悪性腫瘍があげられます。した がって、低コレステロール血症の患者をみた場合には、これらの基礎疾患の除外 はもちろん、総コレステロール値の推移を確かめて急速に低下しているかどうか を検証することが、悪性疾患の早期発見にもきわめて重要であるといえます。

LDLは比重1.019~1.063g/mLに分布し、粒子の直径は20~26nm(200 ~260Å)といわれていますが、small dense LDLとは直径25.5nm以下のLDL 粒子で、比重1.044~1.063g/mLに分布しています。臨床的には2~16%ポ リアクリルアミド・グラジェントゲルを用いた電気泳動(PAGE)によりLDL粒 子の移動度からsmall dense LDLの出現を判定します。VLDLのピークから HDLのピークまでの距離=a、LDLまでの距離=bとし、b/a≦0.4が正常です。 「リポフォー®」を用いた測定法はリポ蛋白精密測定法として保険診療上認められ た方法です。沈殿法による定量も試みられていますが、国際的には電気泳動によ る方法が認知されています。small dense LDLの出現は耐糖能異常に伴う高ト リグリセライド血症で高頻度に認められます。血清脂質値が異常を示さない例 (正脂血症例)でも耐糖能異常ではsmall dense LDLを認めることがよくありま す。したがって、small dense LDLを減ずるためにはその原因である耐糖能異 常、高トリグリセライド血症を是正することで目的が達成されると考えられます。

レムナントは小腸由来のカイロミクロンや肝由来のVLDLなどのトリグリセラ イドに富むリポ蛋白が、血中でリポ蛋白リパーゼの作用により変化した中間代謝 産物です。レムナントはLDL同様、動脈硬化惹起性でありⅢ型高脂血症、家族性 複合型高脂血症、糖尿病性高トリグリセライド血症、メタボリックシンドローム における冠動脈疾患発症の増加に関与していると考えられます。レムナントの血 中での増加は従来リポ蛋白電気泳動でのbroadβパターンの出現にて判定してい ましたが、現在、血中レムナント濃度を反映するレムナント様リポ蛋白コレステ ロール(RLP-C)が測定できレムナントの定量的評価が可能です。高レムナン ト血症の治療は、食事療法などの生活習慣の改善とフィブラート系薬が有効です。 また、スタチンも有効であり高LDL-コレステロール血症合併例には繁用します。 耐糖能異常、高血圧などの合併も多いため、それらの管理も重要です。

閉経前女性のLDL-コレステロール値は男性より低値ですが、閉経後急増し男 性より高値を示すようになります。閉経前女性の心筋梗塞、脳梗塞発症率は男性 に比べきわめて低いのですが、閉経後は増加し男女差が縮小します。したがって 閉経前女性の脂質異常症に対する治療は生活習慣が中心となります。一方、閉経 前であっても、冠動脈疾患発症リスクが高い一次予防患者、家族性高コレステロ ール血症、冠動脈疾患再発予防患者などでは薬物治療が必要な場合もあります。
 妊娠可能年齢の女性の脂質異常症に対する薬物治療には注意が必要です。胎児、 乳児に対するスタチン、フィブラート系薬の安全性は確立されておらず、催奇性 の報告もあり妊婦、授乳婦に対する投与は禁忌です。
 閉経後女性の動脈硬化症発症リスクは閉経前に比べて高まるので、生活習慣改 善を基本とし、危険因子の状況をみて薬物治療を検討することが大切です。


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65歳以上の高齢者のうち、75歳未満の前期高齢者については、国内外でエビ デンスの集積があり、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」において も管理対象を75歳未満までとしています。一方で75歳以上の後期高齢者の高 LDL-コレステロール血症治療に関する意義は明らかでなく、主治医の判断で 個々の患者に対応するとしています。留意すべきこととして高齢者は若年者に比 べ併存疾患が多いことに加え、肝機能、腎機能、薬物代謝機能の低下にも注意す べきです。また、高齢者といえども生活習慣是正がまず行われるべきであるのは 言うまでもありませんが、厳重な食事制限や運動療法は行いにくく、逆に低栄養 などの栄養障害をきたすことも念頭に置く必要があるでしょう。

小児ではLDL-コレステロール値 ≧ 140mg/dL、トリグリセライド値 ≧ 140 mg/dL、HDL-コレステロール値 < 40mg/dLを医学的に管理が必要な脂質異 常症の診断基準としています。成人に比べ遺伝性の脂質異常症の割合が高いのが 小児の特徴であり、異常値を示す児をみた場合、両親を含めた家族解析が必要で す。特に家族性高コレステロール血症は頻度も高く、学童期以降では動脈硬化が 急速に進行することから食事療法に加えスタチン系の薬物治療が必要な例もあり ます。また、Ⅱb型高脂血症児では家族性複合型高脂血症の可能性が高いと思わ れます。Ⅱb型ではインスリン抵抗性も高くなっている事から、メタボリックシ ンドロームへ移行しないように、早期からの食事を含めた生活習慣の適正化を図 る必要があります。二次性の脂質異常症はそのほとんどが小児では肥満に関連し ており、肥満の治療により、多くは脂質異常症は改善します。腎臓や内分泌疾患 に合併する脂質異常症では原疾患の治療を優先する必要があります。

CKD(chronic kidney disease)は、心血管イベント発症の高リスク群で、 腎機能が低下するに並行してその危険性が高くなることが知られています。その 原因として、Na貯留による血圧上昇、血管内皮細胞機能異常、脂質異常、糖尿 病や肥満の合併などが指摘されています。CKDと脂質異常症の関連としては、 高LDL-コレステロール血症をスタチンで治療することにより、心血管イベント が減少し、腎機能の低下や蛋白尿が抑制されるとの報告があります。一方、 CKDが進行すると脂質異常(レムナントリポ蛋白の貯留、高トリグリセライド 血症、低HDL-コレステロール血症など)がみられます。また蛋白尿が高度にな ると肝臓におけるVLDLの合成が亢進し、LDL分画も上昇します。脂質管理:心 血管イベント発症予防にはまずLDL-コレステロール値の厳格な管理が重要で、 スタチンを用いてLDL-コレステロール値120mg/dL未満(できればLDL-コレ ステロール値100mg/dL未満)が推奨されています。ただしCKDが進行すると 薬剤による横紋筋融解症のリスクが高くなることに注意し、CKD3期以上でスタ チン投与は注意深い観察、CKD4期でフィブラート投与は禁忌です。プロブコー ル、エゼチミブ、陰イオン交換樹脂、EPA製剤等の使用は可能です。

原発性高脂血症は血液中の総コレステロールやトリグリセライドが増加する病 気の中で、原因となる疾患や薬剤服用を伴わないものをいいます。家族性高コレ ステロール血症は代表的な疾患で、その原因はLDL受容体の欠損によります。ア キレス腱の肥厚は大事な所見です。総コレステロール値、トリグリセライド値の 両者が高くなる高脂血症にはアポ蛋白Eの異常によるⅢ型高脂血症やⅡb型高脂 血症を呈する家族性複合型高脂血症があります。家族性複合型高脂血症の原因は まだよくわかっていません。これらの原発性高脂血症は、一般的に若年から動脈 硬化が進行しやすく、心筋梗塞、脳梗塞の原因となります。その他の危険因子と ともに適正に管理して、動脈硬化症を予防することが重要です。トリグリセライ ド値が1,000mg/dLを超えるようなⅠ型やⅤ型高脂血症は急性膵炎などを引き 起こすことがあります。家族性Ⅰ型高脂血症はリポ蛋白リパーゼやアポ蛋白CⅡ の欠損によることがわかっています。

現在のリスク評価チャートは、治療中の方も含まれた追跡データで作成されて います。ただし、追跡開始時に脳卒中、心筋梗塞の既往がある方は分析から除か れています。したがって、治療中の患者さんでも、脳卒中、心筋梗塞等の既往の ない方は、このまま利用できます。とはいえ、このリスク評価チャートは、観察 研究からの予測値ですので、リスクが低下すればこのデータにしたがって低下す ることが期待されますが、薬物治療の臨床試験成績と異なることは、留意しなけ ればなりません。治療して収縮期血圧が140mmHgになった人と、もとから 140mmHgの人とでは、当然、高血圧の罹病歴の長い人の方がリスクが高いこ とになります。また、あくまで平均としての予測値です。これらのことを考慮さ れ、患者さんに説明されるとよいと思います。


ガイドラインに沿って、リスクを評価し、まず生活習慣指導を行う群であるの か、すぐに薬物介入が必要であるかを判断します。肥満がある場合は、運動や食 事治療により体重が減少すると、LDL-コレステロール値もトリグリセライド値 もともに低下することがあります。高トリグリセライド血症は食事治療により著 明な改善が期待されます。生活習慣改善により高トリグリセライド血症が改善し、 高LDL-コレステロール血症のみが残り、なお目標値に達しない場合は個人のリ スクカテゴリーに応じてスタチンなどによる薬物療法を開始します。
 冠動脈疾患を発症した後の再発予防(二次予防)では、生活習慣改善と同時に 薬物療法を開始する必要があります。この状況下での高LDL-コレステロール血 症、高トリグリセライド血症の合併例の治療にはいくつかの選択肢があります。 心筋梗塞後の高LDL-コレステロール血症に対しては、早期からスタチン投与の 利点が示されつつありますが、高トリグリセライド血症治療に関してはこのよう なエビデンスはありません。したがって、さしあたりスタチンにより早急なかつ 十分なLDL低下を図るとともに、生活習慣改善により高トリグリセライド血症の 改善を行うことが第一の選択肢です。一部のスタチンにはトリグリセライド値低 下作用があるものもあるので、このようなスタチンを選択します。
 第2は、コレステロール低下薬であるエゼチミブとフィブラートの併用です。 エゼチミブが肝臓で代謝排泄されるため腎機能低下が疑われる高齢者でも比較的 安全に使用できる組み合わせです。

 第3はスタチンとフィブラート系薬の併用です。この併用により横紋筋融解症 の頻度が増えることから、両者の併用は慎重投与、腎機能低下がある場合は原則 併用禁忌とされています。しかし、横紋筋融解症の増加は一部のスタチンに限ら れるとの考えから、この組み合わせの見直す動きもあるようです。
 また高レムナント血症のためトリグリセライドとnon HDL-コレステロールが 増加している場合にはフィブラート系薬単独で両者が低下する例が見られます。

スタチンはコレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を阻害 し、LDL-コレステロール値を低下させる薬です。現在わが国ではプラバスタチ ン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトロバスタチン、ピタバスタチン、ロ スバスタチンが使用されています。スタチンの選択は大規模臨床介入試験で長期 の効果と安全性が海外のみならず、日本においても確立されたスタチンが一次選 択薬となります。また家族性高コレステロール血症、急性冠症候群などリスクが 高い場合にはLDL-コレステロール低下効果が大きいスタチンが適応になります。 スタチンは安全性の高い薬剤ですが、LDL-コレステロール低下作用が強いスタ チンほど、肝障害、横紋筋融解症など筋肉への影響などの副作用に注意が必要で す。シンバスタチン、フルバスタチン、アトロバスタチンは薬剤代謝酵素 (CYP)で代謝されるため薬剤相互作用に注意する必要があります。特に薬剤の 代謝能が低下し、多剤服用する機会が多い高齢者においては十分な監視と注意が 必要です。

小腸コレステロールトランスポーターは小腸粘膜細胞刷子縁に存在するコレス テロールを特異的に認識する蛋白で、Niemann-Pick C1 Like1 Protein (NPC1L1)蛋白と呼ばれています。エゼチミブは小腸コレステロールトランス ポーター阻害薬と分類されます。LDL-コレステロール値を低下させる薬剤とし てはスタチンが一般的ですが、作用機序の異なる薬剤との併用はさらに効果を飛 躍的に上げます。小腸コレステロールトランスポーター阻害薬は、強力にLDL-コレステロール値を低下させる必要のある高リスク群や二次予防、家族性高コレ ステロール血症などにスタチンと併用して使用するか、コレステロール吸収の亢 進している場合(糖尿病、肥満など)には、単剤でも有効性が期待されます。

トランス型の脂肪酸は、構造中にトランス型の二重結合を持つ不飽和脂肪酸で、 シス型の脂肪酸が主体である天然植物油にはほとんど含まれず、水素を添加して 人工的に硬化するマーガリン、ショートニングなどの製造過程で副産物として発 生します。トランス型の脂肪酸摂取が、LDL-コレステロール値/HDL-コレステ ロール値比を飽和脂肪酸摂取時の約2倍増加させること、Lp(a)を増加させる ことが報告されています。また、血管内皮機能を障害することや、インスリン抵 抗性を悪化させることも報告されており、動脈硬化性疾患のリスクを増大させる 可能性があると考えられます。そのため、欧米諸国では食品中のトランス型の脂 肪酸含有量の表示が義務づけられ、その摂取制限が推奨されています。以上のこ とより動脈硬化予防の面からトランス型の脂肪酸の摂取は控えた方が良いと考え られます。

炭水化物は、単糖、オリゴ糖、多糖、単糖誘導体に分類され、五訂日本食品標 準成分表では水溶性および不溶性の食物繊維が含まれた値で示されています。一 方、糖質は一般的に、炭水化物のうちのブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖、麦芽糖、 デンプンやグリコーゲンなどのエネルギー源として利用されやすいものを指して いることが多いようですが、正しくは炭水化物のうち不溶性食物繊維を除いたも のをいいます。


飽和脂肪酸(SFA)、一価不飽和脂肪酸(MUFA)、多価不飽和脂肪酸 (PUFA)の比をS/M/P比といいます。動物性脂肪に多く含まれるSFAは総コレ ステロール値および冠動脈発症率を増加させるため、動脈硬化予防の観点から摂 取制限が有用です。逆にオリーブ油などに多く含まれるMUFA摂取の増加は血 清脂質を改善し冠動脈疾患の発症を抑制することが示されています。また、 SFAをPUFAに置き換えると血清脂質が改善すること、特に、魚油に多く含まれ るn-3系PUFAの摂取が、血清脂質改善に加え、血圧低下、抗凝固作用、血管内 皮機能の改善などをもたらし冠動脈疾患の発症を抑制することが報告されていま す。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版の「脂質異常症における食事療 法の基本」では、S/M/Pは3/4/3程度が望ましいとしています。

世界の疫学調査から得られている結論は、少量ないしは中等度の飲酒量までは、 そのアルコール飲料の種類を問わず、心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患の危険 因子にはならず、むしろ、もともと飲酒しない人よりもリスクが低下するとされ ています。ただし、少量ないしは中等度の飲酒量は、1日当たりの平均が、男性 ならビール1本まで、日本酒なら1合まで、ワインならグラス2杯までです。女 性はそれよりも少ない量です。虚血性心疾患同様に、少量飲酒で血栓性脳梗塞に は予防的に作用するとの外国での成績がありますが、日本人に多いラクナ梗塞に は当てはまらない可能性が大きいので、注意が必要です。
 多量飲酒になれば、脳卒中をはじめとした循環器疾患の発症危険度が増すばか りでなく、がんの発症も増します。高血圧にもなります。
 少量飲酒が虚血性心疾患に予防的に作用するとはいえ、飲酒習慣のない人に飲 酒を勧めることはよくありません。



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